作品画像 鈴木実 家族の肖像 徳島県立近代美術館 特別展 日本の戦後彫刻 7月16日から9月4日まで開催
作品画像 鈴木実 家族の肖像 徳島県立近代美術館 特別展 日本の戦後彫刻 7月16日から9月4日まで開催
作品画像 青木千絵 BODY 08-1 徳島県立近代美術館 特別展 日本の戦後彫刻 7月16日から9月4日まで開催

青木千絵〈BODY 08-1〉2008年
徳島県立近代美術館蔵

徳島県立近代美術館の人間像をテーマとした彫刻のコレクションは、第二次世界大戦後の日本の彫刻の様相をある程度見渡すことができるようになりつつあります。これに、相生森林美術館の木彫コレクションから抽象彫刻と人間像をテーマとした優品を加えて、1950年代から2000年代にかけての日本の彫刻の移り変わりをご紹介します。

展覧会構成

“もの”と“語り”の関係

 日本の戦後美術の動向は、1970年代から80年代頃を境にその様子を大きく変えました。それは、彫刻においては“もの”と“語り”の関係の変化として見ることができます。彫刻は、物体そのもの、そしてその物体が存在する空間により、作者の思いが表現されています。
 この展覧会では、物体と空間を“もの”、作者の思いを“語り”、そしてそれらが結合して表現された作品を“物語”ととらえ、日本の戦後彫刻の移り変わりを、3つの物語のコーナーを設けて “もの”と“語り”の様々な関係とその変遷をたどります。
 また、時系列に沿った各コーナーのサテライト展示として、テーマで作品を集めたトピック展示を設けます。

植木茂 トルソ 1957年

植木茂〈トルソ〉1957年
徳島県立近代美術館蔵

「時代を反映した物語」

 ここでは1950年代から1970年代初めにかけての時代を概観します。この時代を大きく括ると、それまでの美術界に新しい戦後の動向が加わった再出発の時代から、大きく変わっていく社会と関わりながら多様化していく時代といえるでしょう。
 1950年代前後は、戦時の抑圧から解放された自由と社会的混乱の中で、喜び苦悩する人間の生を謳う作品、社会と人の関わりを表した作品など、その時代と関わって物語る作品を紹介します。
 1960年代前後になると、若い世代の作家による自由な表現が過激化し、従来の絵画や彫刻といったイメージでは包括できないような「反芸術」と呼ばれる作品が現れます。また、抽象彫刻が展開するとともに、新しい素材の使用や、光や動きを取り入れた作品の出現など、様々な新しい動向を見ることができます。ここでは、「反芸術」や新しい動向として時代と関わった作家の作品を紹介します。

植木茂 トルソ 1957年

篠原有司男〈首長オートバイ〉1979年
徳島県立近代美術館蔵
©Ushio+Noriko shinohara

「寡黙な物語」

 このコーナーでは、1960年代末から1980年代初めまでを含めた1970年代前後の動向を紹介します。この時代を大きく括ると、「コンセプチュアルアート」(概念芸術)や、「もの派」と呼ばれる作家たちに代表される、寡黙な物語の時代といえます。
 現代美術の展開のなかで美術が成立する条件を突き詰めていった結果、観念や思考そのものを作品とみなすコンセプチュアルアートが現れました。また世界的な美術の動向と平行するように、日本では、ものを提示することで表現する「もの派」と呼ばれる作家たちが出現します。
 これらの作品は、作品そのものが作家の思いを熱く語るというようなものではないことから「寡黙な物語」と名付けました。ここでは、後の時代に制作された作品となりますが、様子をうかがい知ることのできる作品をそれぞれ紹介します。

「私の物語」

 最後に1980年代前後から2000年代初めの「ゼロ年代」までを紹介します。
 1970年代前後の寡黙な物語の時代は、ものは提示するものの“作らない”で表現するという、ある種禁欲的な状況で、作家にとっては極めて重苦しい状況だったことでしょう。その反動が現れたのがこの時代で、物語が帰ってきます。しかし、帰ってきた物語は、70年代以前のような既に枠組みとしてある社会と関わりをもった物語ではなく「私の物語」でした。
 1980年代前後には、社会的状況の変化の中で、既存の制度によらず、自分の感覚をその基として自分の言葉で語る作家たちが現れます。この動きはニューウェーブと呼ばれました。作品が醸し出す雰囲気、作品が置かれた場の気配などを含めた様々な物語を、作家それぞれの言葉で語っています。
 1990年前後には、サブカルチャーのイメージを多用して物語るネオ・ポップと呼ばれる若手作家が登場します。また2000年前後に現れた、自分の身辺の事柄をもとにそれぞれが物語を構成する新しいタイプの作品群に対して「マイクロポップ」なる概念が提唱されたりします。
 それらの作家たちの作品は、枠組みに依った大きな物語からそれぞれの物語に拡散した1990年代以降の物語が、個別化が進む社会的変化のなかで、一層、自分のことを語る物語となる傾向を強めているように思われます。

中西學 ROCKIN’ RIDER’87 1987年

中西學〈ROCKIN’ RIDER’87〉1987年
徳島県立近代美術館蔵

トピック展示

  • topic1 _ 作家の展開

    戦後の抽象彫刻を代表する作家である建畠覚造を取り上げ、3点の作品で作家の展開を紹介します。

  • topic2 _ 目

    舟越保武、細川宗英、鈴木治が人体の頭部を作った作品を並べて展示します。目の部分に注目して表現を見比べていただければと思います。

  • topic3 _ ある4人展

    深井隆によると、1980年代前半頃に、鈴木実が深井隆、舟越桂、藪内佐斗司に4人展をやろうと声を掛けたものの、実現しなかったといいます。相生森林美術館のコレクションに鈴木実と深井隆、当館のコレクションには舟越桂と藪内佐斗司の木彫作品があることから、制作された時代は深井の発言にある時代とは一致しませんが、4人の作家の木彫作品を一堂に展示し、その様子を想います。

深井隆 逃れゆく思念 -遠い風- 1993年

深井隆〈逃れゆく思念〉1993年
相生森林美術館蔵

リアルな美的体験

 時代を強く反映した物語から、寡黙な物語を経て、私の物語へと、その語りは変わってきましたが、作者の思いは全て作品という物によって語られています。彫刻は、物がそこにあることで成就する実体の芸術です。
 彫刻の鑑賞は、彫刻が実体の芸術であることから、作者の語りの身体的な体験といえます。その語りの変遷をたどるこの展覧会は、デジタル化していく現代を生きる人々にとって、リアルな美的体験の機会となることでしょう。

青木千絵 BODY08-1 2008年

青木千絵〈BODY 08-1〉2008年
徳島県立近代美術館蔵

鈴木実 家族の肖像 1981年

鈴木実〈家族の肖像〉1981年
相生森林美術館蔵

開催概要

  • 展覧会名

    特別展 日本の戦後彫刻

  • 会期

    2022年7月16日(土曜日)から9月4日(日曜日)

  • 会場

    徳島県立近代美術館

  • 開館時間

    午前9時30分から午後5時

  • 休館日

    月曜日(7月18日、8月15日をのぞく)、7月19日(火)

  • 観覧料

    一般 600[480]円 高・大学生 450[360]円 小・中学生 300[240]円
    ※[  ]内は20名以上の団体料金です。
    ※65歳以上の方で年齢を証明できるものをご提示いただいた方は観覧料が半額になります。
    ※身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳をご提示いただいた方とその介助をされる方1名は観覧料が無料になります。
    ※小・中・高生は土・日・祝日・振替休日の観覧料が無料になります。
    ※本展の観覧料で、所蔵作品展もご覧いただけます。

  • 主催

    徳島県立近代美術館

  • 後援

    徳島新聞社、四国放送株式会社、NHK徳島放送局、エフエム徳島、(公財)徳島県文化振興財団

  • 協力

    相生森林美術館

イベント

  • 展示解説

    • 講師

      近代美術館学芸員

    • 日時

      7月24日(日)、8月28日(日) いずれも14時から15時

    • 会場

      展覧会場

    • 対象

      一般

    • 備考

      申込み不要/観覧券が必要です

  • 手話通訳付き展示解説

    • 講師

      近代美術館学芸員

    • 日時

      8月7日(日) 10時から11時30分

    • 会場

      展覧会場

    • 対象

      どなたでも(聞こえる方もどうぞご参加ください)

    • 備考

      申込み不要/観覧券が必要です

  • こども鑑賞クラブ「チョウコク入門」

    • 講師

      近代美術館スタッフ

    • 日時

      7月30日(土) 14時から14時45分

    • 会場

      美術館2階ロビーに集合

    • 対象

      小学生

    • 備考

      定員15名(電話で申込み)/先着順
      参加無料(保護者同伴可 ※要観覧券)
      定員を上回った場合、15時から2回目を行います

  • 触れて考える鑑賞会

    • 講師

      近代美術館学芸員ほか

    • 日時

      7月30日(土) 16時30分から18時

    • 会場

      美術館3階アトリエ2に集合

    • 対象

      どなたでも(視覚障がいのある方も、
      目の見える方も一緒に参加できます)

    • 備考

      定員10名程度(電話で申込み)/先着順/参加無料
       

アクセス

JR徳島駅からバス利用

  • ・徳島市営バス3番のりば「文化の森」行き直通バスに乗車し18分、終点「文化の森」で下車。
  • ・徳島市営バス3番のりば「市原【国道55号バイパス(ふれあい健康館・富田橋通り)経由】」行きに乗車し25分、「文化の森」で下車
  • ・徳島市営バス2番のりば「法花【文化の森経由】」行きに乗車し16分、「文化の森」で下車。
  • ・徳島市営バス3番のりば「しらさぎ台」行き、「一宮」行き、または「天の原(入田)」行きに乗車し16分、「園瀬橋」で下車。徒歩約10分
  • ・徳島バス4番のりば「仁井田西」行き、または「佐那河内線 神山高校前」行きに乗車し16分、「園瀬橋」下車。徒歩約10分

JR文化の森駅からバス利用

  • ・バス停「文化の森駅東」から「市原【国道55号バイパス(ふれあい健康館・富田橋通り)経由】」行きに乗車し7分、「文化の森」で下車。

徳島市営バス 徳島市交通局 ☎ 088-623-2154

徳島バス ☎ 088-622-1811

>> 徳島バスnavi[外部リンク]