この作品は、パリの北西約65キロにある小さな村、ボワジュルーのアトリエでマリー・テレーズを
モデルに描かれたものです。眉間にくぼみのない、なだらかで大きな鼻は、このころ新境地を開いた
ピカソの彫刻にも多用されています。柔らかい線を用いてデフォルメされた彼女の姿は、豊かで性的な女神であり、澄んだ色調が
ピカソのときめきを伝えてくれます。目を閉じてすやすやと眠る彼女が目を覚まさないように、息をころしてそっとしている五十男の
ピカソの充実した幸福を思いやって、思わずほほえんでしまうことでしょう。