ピカソは、1944年頃に恋人のマリー=テレーズ、そしてドラ・マールとついに別れた。次の恋人はフランソワーズだったが、彼女も53年に
ピカソのもとを去る。その少し前に南仏ヴァロリスの陶芸工房で出会ったのがジャクリーヌである。彼女はその工房で店員をしていた。54年から2人は共に住むようになり、55年に正妻のオルガが亡くなると、61年に結婚する。この作品はジャクリーヌを
モデルにしている。堅実で献身的に
ピカソにつくし、妻として晩年の
ピカソを支えた女性である。恋人であり妻にもなったジャクリーヌは、画家
ピカソにとって第一の
モデルだったのに違いない。ギリシャ彫刻のような彫りの深い顔立ち、額から長く伸びた鼻、アーモンド形の瞳、濃くて長い眉毛。この作品にも、彼女の顔の特徴がよく表れている。制作された55年にルイーズ・
レイリス画廊より販売された。刷りはラクリエール工房。(「変貌するひとのすがた
ピカソの版画」(コレクション+αで楽しむシリーズ)図録 2006年)