ジョイス・マンソール著。ルシャや
ロート、あるいはソル・ルウィットらが時代を切り拓くアーティスツ・ブックスを制作していた一方で、商業的にアーティストの本を刊行する出版社も出始める。パリの出版社ソ
レイユ・ノアールもその一つ。それらの作品の特徴の一つに、本の装丁、デザイン自体ではなく、そのケース、パッ
ケージに工夫を凝らしている点が挙げられる。〈奥底の青〉は、
アレシンスキーの作品。戦後、世界の各地で同時多発的に起こった、
抽象表現主義や
アンフォルメル、具体などの
表現主義的な動きの一つである「
コブラ」のメンバーの一人。独特の記号のような、
カリグラフィのような形態が画面全体にちりばめられたような作風で知られている。本のケースはコルク製であり、麻のロープで透明のアクリルの円柱とつながっている。円柱の中には
アレシンスキーの版画が封入されている。本の容器を
オブジェとして制作するという意図が明確な作品。(「本と美術−20世紀の挿絵本からアーティスツ・ブックスまで」図録 2002年)