『
エスタンプ・オリジナル』誌はアンドレ・マルティによって、1893年から1895年の間にパリで発行された、100部限定のオリジナル版画集で、40点の版画が年4回に分けて配本された。1年分の料金は200フランだったが、
ロートレックやゴーガン、
ナビ派の
ボナールや
ドニ等当時の若手の前衛作家たちを集めた版画集であったため、批評家にも好評を受けて成功した。マス・コミュニケーションの手段としてもてはやされてきた版画を、創造的美術の手段として刷新することを謳った『
エスタンプ・オリジナル』誌は、大部分が最新の技術を駆使した多色刷の
石版画作品だったが、その他に
エッチングや
木版画、立体版画等も含まれていた。また様式の上でも、
ジャポニスムを吸収した作家たちにより、大胆な構図や画面の平面化、色彩上の実験が推し進められた。
マルタンの表紙は、1855年にパリの国立図書館が入手した歌麿の『画本虫撰』の一図と酷似しているが、
マルタンは瓢箪に葡萄のつるも絡めさせ、それをさらに版画用のプレス機のハンドルに絡めたことで、当時の創作版画における日本美術の影響をユーモラスに示唆したのかもしれない。(「世紀末から 西洋の中の日本「
ジャポニスム展」図録)