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ふたり(しゅうさく) 二人(習作)
伊原宇三郎は、明治27年徳島市に生まれ、大阪に移る18歳まで育った。戦前、戦後を通じて画壇の重鎮として活躍し、帝展や日展の審査員など要職を歴任している。徳島ゆかりの代表的な画家の一人である。この作品は、昭和5年の第11回帝展で特選を受賞した「二人」とよく似た図柄である。制作年は同じ年で、サイズもほぼ等しい。伊原は受賞後、雑誌の取材にこたえて「いろいろのことに災いされて、一枚描き直してみたりもした」と述べているが、あるいはこれがその作品だったのかも知れない。伊原が最も力を入れた人物画には、華々しい色彩や、構図の奇抜さはない。そのような面白さよりも、力強い量感をとらえることに心を砕いたのである。また制作の前にはデッサンや習作を繰り返していた。この作品も安定した構図、堂々とした量感が見事で、即興性や偶然性とは無縁な制作ぶりがうかがえ、伊原の特徴がよく表われた代表作の一つだと言えるだろう。(江川佳秀「文化の森から・収蔵品紹介」讀賣新聞1988年05月24日掲載)
カテゴリー:作品
新古典主義とは?【 美術用語 】 18世紀後半から19世紀初頭にかけてヨーロッパ中に広まった古典古代(ギリシヤ・ローマ)の復活を目指した美学上の運動や、建築、彫刻、工芸の各ジャンルにわたる美術の様式を指す。考古学的正確さへの強い感心と合理的美学に支えられた古代的モチーフの多用や、完成された表現を特徴とする。ヘルクラーネウムやポンペイの発堀、ギリシアや小アジアへの調査旅行によって、古代への関心が高まり、ヴィンケルマンが著した『ギリシア美術模倣論』などの美学上の影響によって、18世紀後半には支配的な傾向となった。代表的画家はラファエル・メングスだが、ラファエロ,コレッジオ,ティツィアーノや古代美術の作品に基づいて、グランド・マナー(大様式)と呼ばれる様式を生み出し、影響力を広げた。絵画の分野で最もすぐれた成果をみせたのはダヴィッドで、それをアングルが引き継いだ。新古典主義は、19世紀のアカデミズム芸術の基本原理として長く生き続けたが、同時に、遠い古代や異国に対する憧れと官能的なものへの傾斜により、ロマン主義芸術の先駆にもなった。 |
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