作家名:
村井正誠
制作年:1957年
技 法:油彩 キャンバス
日本の
抽象絵画のパイオニアの一人である村井の作品は、
抽象的な形で構成されたものだが、形式にとらわれない、自由でおおらかな表現を見せている。純粋な
抽象画を求めていた若いころ、構成に失敗した作品の方に飽きのこないおもしろさを見つけ、人間臭さのある画面をつくり出す必要を感じた、と言う。彼が「形式的にどんなに新鮮で目新しいものでも、人間的な要素がまったく失われていたらむなしいだけだ」と語るのも、その追求の結果である。人間のイメージをもとに
抽象化したこの作品も、このような彼の考え方がよく表れている。一つ一つの形を見れば
抽象形熊だが、無機的な冷たさはなく、黒い骨格のような形で人体の形そのものを暗示し、さまざまな色彩に人間的な感情を込めている。ユーモラスな印象も受けるこの二人の人物が、何を思っているのか想像するのも楽しい。(森芳功「文化の森から・収蔵品紹介」讀賣新聞1989年07月12日掲載)