作家名:
岡本信治郎
制作年:1964年
技 法:アクリル絵具 キャンバス
5メートル近くもある大画面に、マンガ風の女性像が横たわっている。描かれているのは、1962年にこの世を去ったハリウッドのスター、マリリン・モンローである。グラマーな肢体、高いハイヒール、そして死の床に置かれていたという受話器など、彼女を象徴するイメージが、派手な色彩とユーモラスな形によって示されている。そこには、スターに対する一種の親近感と、その死をあっけらかんと眺めるほかない空々しさとが、共に虚しく漂っているようだ。作者の
岡本信治郎は、このように大衆的なモチーフを明るいマンガ調でとらえてみせる。この作品では、人間的な個性を奪われ、大衆の性的なシンボルに仕立て上げられたマリリンの孤独な死を、いかにもそっけなく描いている。もとより実体のないスター像の空虚さが、そこに露呈されていると言えよう。(竹内利夫「文化の森から・収蔵品紹介」讀賣新聞1990年08月15日掲載)