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ふたつのりんご 2ツのリンゴ
わが国には、浮世絵版画をはじめとした木版画の長い伝統があるが、現代の版画家たちは伝統的な技法だけで満足することなく、常に新しい技法を開拓し、表現の幅を広げている。徳島県出身の木版画家、吹田文明もその代表的な作家である。たとえばこの作品の木目のある美しい色彩も、水性絵の具と油性絵の具を併用する独自の技法で生み出された。金ブラシで立てた木目の間に油絵の具をつめ、プレス機の強い圧力で木目を刷り取る。しかも、紙にしみ込む性質のある水性絵の具で刷った上に油性絵の具を刷り重ねることによって、作品に豊かな色彩の幅が与えられている。この技法によって、リンゴや蝶などの具象表現だけでなく、花火や宇宙を連想させる抽象表現にも、華麗な色彩のハーモニーと引き込まれるような心理的空間がつくられる。吹田は、木版技法の可能性を開拓しながら、伝統にない現代の表現を探求している。(森芳功「文化の森から・収蔵品紹介」讀賣新聞1990年07月25日掲載)
カテゴリー:作品
ヌーヴォー・レアリスムとは?【 美術用語 】 第二次世界大戦後の、前衛美術の動向の一つをいう。1960年にミラノにおいて、最初の展覧会を開いた際に、批評家のピエール・レスタニーが名付けた「ヌーヴォー・レアリスム」が宣言された。イヴ・クラインを中心に集まった作家たちは、レスタニー、アルマンなどで、「ヌーヴォー・レアリスト」を名乗った。これは、現代社会を新しく創り出された自然とみなし、「新しい現実主義」の美術を示そうというもので、ヨーロッパのネオ・ダダ的な傾向から派生したものと考えられる。例えば、工場廃棄物の単なる寄せ集めや、作家の創作の跡がうかがえぬものを、ただ提示するというだけのものもある。 |
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