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ふたつのりんご 2ツのリンゴ
わが国には、浮世絵版画をはじめとした木版画の長い伝統があるが、現代の版画家たちは伝統的な技法だけで満足することなく、常に新しい技法を開拓し、表現の幅を広げている。徳島県出身の木版画家、吹田文明もその代表的な作家である。たとえばこの作品の木目のある美しい色彩も、水性絵の具と油性絵の具を併用する独自の技法で生み出された。金ブラシで立てた木目の間に油絵の具をつめ、プレス機の強い圧力で木目を刷り取る。しかも、紙にしみ込む性質のある水性絵の具で刷った上に油性絵の具を刷り重ねることによって、作品に豊かな色彩の幅が与えられている。この技法によって、リンゴや蝶などの具象表現だけでなく、花火や宇宙を連想させる抽象表現にも、華麗な色彩のハーモニーと引き込まれるような心理的空間がつくられる。吹田は、木版技法の可能性を開拓しながら、伝統にない現代の表現を探求している。(森芳功「文化の森から・収蔵品紹介」讀賣新聞1990年07月25日掲載)
カテゴリー:作品
未来派とは?【 美術用語 】 20世紀初頭、イタリアを中心に興った芸術運動。1909年2月20日、詩人マリネッティがパリの日刊紙『フィガロ』紙上に最初の「未来派宣言」を発表し、10年3月8日ボッチョーニ、カルラ、ルッソロ、バルラ、セヴェリーニがトリノの劇場で観衆を前にイタリアで最初の未来派運動宣言を行なった。新時代はそれにふさわしい生活様式と表現を必要とするとし、いっさいの過去を精算して速度とダイナミックな力の渦巻く機械文明の感覚を力強く表現することを主張した。造型の観点からは、対象の物質性を破壊してキュビズムから得た同時代性の思想を画面に定着し、運動の表現に新たな道を開いた点が注目される。運動としては1915年頃までで終ったが、ダダをはじめ20世紀芸術の諸運動に与えた影響は少なくない。印刷物を通じた幅広い広報活動をおこない、大正10年代の日本の美術・文学にも多くの影響を与えた。 |
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