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ふじさん 富士山
島は写真製版によるシルクスクリーンで様々な表現を試みている。この技法はポジフィルムをスクリーン上に転写した孔版の一種だが、単なる写真の複製にとどまらず、写真では得られない画面効果を造り出すことができる。ここで取り上げた作品は、静岡県富士市の風景を提った写真をもとにしている。富士山の裾(すそ)野に開けた富士市は古くから製紙業が盛んで、作品が造られた1970年代は、ばい煙とヘドロによる公害の町として有名だった。画面の煙突は、ばい煙を上げる製紙工場、手前はパルプの集積場、奥に見えるのは言うまでもなく富士山である。作者がどこまで意図していたかはわからないが、富士山が日本人の伝統的な意識を代表するとするならば、近代的な工場施設とその結果としての公害は、あまりに皮肉なコントラストを造り出していると言えよう。一見印刷むらに見えるような荒れた画面の処理も、この風景を一層陰惨なものにしている。(江川佳秀「文化の森から・収蔵品紹介」讀賣新聞1988年08月30日掲載)
カテゴリー:作品
モニュメントとは?【 美術用語 】 個人、事件、思想などを顕彰し、記念して、永久に残すことを目的とする作品のことを言う。すなわち記念的造形物一般を指す語で、凱旋門、記念堂、記念像、記念碑、霊廟、陵墓などがあるが、広義には、歴史的・文化的に意義のある建築物、建造物、さらには規模の大きい彫刻、モザイク、ステンド・グラスのような建造物と一体をなすような絵画・工芸装飾の作品類をも指し、ほぼ歴史的建造物・文化財という範囲まで示すこともある。美術作品についてモニュメントという言葉を使うときは、偉大さ、高雅さ、耐久性などのイメージがあり、本質的なことではないにしろ形の大きさも問題となる。また歴史上長く保存されてきたものは、当然保存する価値があると思われたものである。従って、美術批評で美術作品のもつ様式的な意味あいのひとつとして「モニュメンタル」という表現を用いた場合には、元来モニュメントとして作られていないものも、モニュメンタルな様式に含まれることになる。 |
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