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てんい’86ー ちー3 転位 ’86−地− III
日本の銅版画家が、国際舞台で活躍し評価されるようになったのは1950年代以降で、中林が銅版画を制作し、作家としてデビューするのもこのような機運の上にあった。東京芸術大学で駒井哲郎に師事し、銅版画の魅力を知ることで、以後画業の中心にすえる。銅版画とひと言で言っても様々な技法があるが、中林は、自己の内部にあるものを直接銅版に刻み込むよりも、そこに腐食させる工程を加える腐食銅版画の方が素直な表現ができる、と言う。この作品もエッチングやアクアチントといった腐食銅版画の技法で表されている。この作品のユニークさは、題名の「転位」が示すように、落葉を配した枯れ草を直接転写するところにある。自然の容貌(ぼう)をそのまま画面に移しとる手法は版画ならではのものだが、中林は腐食の技法を用いることで、現実と幻想が交差する独特な世界を描き出した。(森芳功「文化の森から・収蔵品紹介」讀賣新聞1989年10月25日掲載)
カテゴリー:作品
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抽象とは?【 美術用語 】 語源はラテン語のアブストラヘレ。対象の構成要素のうち、或るものを他から切り離して、ひき出すこと。絵画や彫刻においても、対象の本質的要素を選び出して描写する点において、多かれ少なかれ抽象の作用が含まれるが、美術上この概念が特別な意義を持つようになったのは、1908年にヴォーリンガーが「抽象と感情移入」において、芸術の根本衝動のひとつとして抽象衝動をあげ、これによって原始民族や東方の諸民族の非抽写的な美術を正当に評価しようとしたことと、1910年にカンディンスキーが、初めて対象的事物を描かない絵画を発表し、1912年には「芸術における精神的なもの」において絵画への道のひとつの極として純粋抽象を論じたことに始まる。これ以降、外的対象的世界を描写しない作品が次々と現われ、非具象(ノン・フィギュラティフ)、絶対、非対象、非再現などと呼ばれたが、最も一般的な呼称として抽象が普及した。また、抽象の出現により、それに対抗して再現的な表現を総括するために具象の概念が使われるようになった。 画面右にこのキーワードの再検索結果が表示されています。そちらもご覧ください。 |
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