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こうしゅうかつらがわふうけい 甲州桂川風景
三宅克己は明治7年(1874)、現在の徳島市に生まれた。日本の初期水彩画の代表的な作家だが、水彩画に関する書物を次々と著し、その普及に努めた功績も忘れることができない。徳島ゆかりの作家の中でも、先にこの紙面で紹介した伊原宇三郎と共に、日本の美術史にとって特に大切な作家だと言えよう。この作品は晩年、78歳ごろの制作である。山梨県・桂川の岸辺に川舟が浮かび、その上に漁師が一人働いている。少し前まで日本のどこでも見られた静かで美しい光景である。しかし水面や空の青い色は何か寒々とした印象を与える。三宅が得意としたのは風景画で、若いころから国内のみならずアメリカやヨーロッパなどの各地を旅行し、スケッチを作品にしているが、この作品を制作した時期も山梨を旅行してこの風景を心にとめたのだろうか。晩年を迎えた画家の心境が伺えるかのような画面である。(江川佳秀「文化の森から・収蔵品紹介」讀賣新聞1989年01月10日掲載)
カテゴリー:作品
バロックとは?【 美術用語 】 広義では16世紀末から18世紀初めまでの美術、文学、音楽等の様式や、時代精神を指す。美術においてはルネサンスの後にくるマニエリスムと、18世紀のロココの間にあたる。狭義ではベルニーニをその代表とする1630年頃のイタリアの建築、彫刻、絵画のことを指す。ルネサンスの成果である新しい科学技術によって、交通手段や情報伝達が発達したこの時代、人々の世界観は大きくゆらぎ始めた。古代ギリシア,ローマを模範とする考えはそのバランスを失っていく。しかし、なおかつ新たな統一を目指そうという傾向が生まれた。装飾過多であったり、形をゆがめたり、特定の瞬間に焦点をあてたり、線よりも面や光を重視したりする手法がとられるようになる。それらはおおむね、迫真性をもった劇的な表現を見せているが、この時代の精神の多岐にわたる現われ方は、けっしてひとまとめにできるものではない。この時代の作家たちとして、ベルニーニのほかに、カラヴァジオ、ルーベンス、レンブラント、フランス・ハルス、エル・グレコ、ベラスケスらがいる。 |
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