オランダは歴史的に、
抽象画家
モンドリアンのような理知的性格とともに、
ゴッホにみられる情熱も生み出してきたが、後者を
アペルは受け継いでいると言えるだろう。彼の作品は、動物や鳥、子供などをモチーフとして、激しい筆触と鮮やかな色彩で描いた
表現主義的な作風を特徴としている。これは彼がアムステルダムからパリに出て、活躍の場を広げていた時に制作した裸婦像で、原始的とも思える激しいエネルギーが見てとれる。しかし、それは破壊的なものでなく、生命に対する肯定的な姿勢であることを見逃してはならない。戦後の欧米では、フランスの
アンフォルメル(不定形絵画)やアメリカの
抽象表現主義が、
表現主義の美術運動として知られているが、
アペルはそれよりもひと足早く、仲間と
コブラ・グループを結成し、活躍していた。近年の彼に対する評価の高さは、その先駆性からもうなずくことができよう。(森芳功「文化の森から・収蔵品紹介」讀賣新聞1989年02月14日掲載)