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ちゃくいのよこたわるははとこ 着衣の横たわる母と子
イギリスのカースルフォードに生まれたヘンリー・ムーアは、20世紀の彫刻家の頂点に立つ一人である。ムーアの彫刻は、半ば抽象化された形態を用いながらも、その表現には、生命の尊厳、自然への回帰、平和への願いがこめられた、極めてヒューマンな要素を含んでいる。「着衣の横たわる母と子」に見られる母子像は、彼が好んだテーマであり、いくつもの忘れがたい作品が残されている。そのなかでも、これは代表的なものの一つといえるだろう。どっしりと横たわる母親の姿は、豊かでたくましい。その腕に抱かれた子供は、小さくかわいい姿で母親に寄り添っている。この母と子の見事な対比によって、母親の母性と温かな愛情、命の尊さが力強く表されている。そして、作品のもつ大きさが、母と子の姿をモニュメンタルなものとし、一層印象深いものとしているように思われる。(森芳功「文化の森から・収蔵品紹介」讀賣新聞1988年05月17日掲載に一部加筆)
カテゴリー:作品
エングレーヴィングとは?【 美術用語 】 版画技法。銅版画は、凹版を製版する技法によって直刻法と酸腐蝕法に大別できるが、これは前者の内の一つで最も単純なもの。銅板にビュラン(断面が正方形か菱形の刃をもつ彫刻刀)で線刻し、そのV字型に彫られた凹部にインキをつめ、プレス機で紙に刷り上げる。ビュランで版材を完全に刻り取ってしまうので、ドライポイントのようなまくれもエッチングのような腐蝕による線のくずれもない、冷たく硬質な線が最大の特徴である。単純な技法ではあるが、抵抗の大きいビュランを自在に操り、髪の毛の数分の一の線からあらゆる太さの線までを彫刻するには相当の熟練を必要とする。「エングレーヴィング」とは正に「彫刻する」意である。15世紀前半には、最初のエングレーヴィング版画が登場している。彫刻に用いる刀の名をとって「ビュラン」と呼ぶことも多いが、その場合は同じくビュランを用いる木口木版もその中に含めて考えることができる。 |
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