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ふたりのじんぶつ 二人の人物
画面全体に蜘蛛の巣のような網目模様が走り回っている。これは1938年に集中してみられる特徴である。一見二人の人物が左右に配置されているように見えるが、同年の関連する素描などと比較すると(クリスチャン・ゼルヴォスのピカソ作品総目録vol.9、No.200、227等)、中央のアーモンド型の形態とその上部にある内部が放射状になった二つの円形が女性の体と胸に見えなくもない(※)。さて、この作品もまた、制作された1938年(ラクリエール工房刷り)には発行されず、42年にピカソとヴォラールの透かしの入った紙に29点刷られたあと(ラクリエール工房刷り)、1960年に刷り師フレロによる5点の試し刷りを経て、ルイーズ・レイリス画廊から出されたのは、ピカソの死後となる1980年のことであった。(※この点については、拙論「ピカソの網目模様風あるいは籠編み風の作風をめぐる一考察」『徳島県立近代美術館紀要 第3号』1995年3月 を参照いただきたい。)(「変貌するひとのすがた ピカソの版画」(コレクション+αで楽しむシリーズ)図録 2006年)
カテゴリー:作品
木口木版とは?【 美術用語 】 版画技法。立木を輪切りにした切り口(木口)を版面とする。版木には黄楊(つげ)や椿(つばき)等の堅い木が使われ、銅彫版と同じく、堅い版材に鋭い線を刻むことのできるビュランやノミによって彫版する。インキは粒子の細かいオフセット印刷用・銅版用・石版用等、油性インキを用い、彫り残された凸部にローラーで均一にインキをのせる。紙は薄手のものが刷り易く、バレンや、より細かい調子を出すためには金属ベラで強く印刷する。特徴は、繊細で精密な表現が可能なこと、また版が堅牢なので大部数印刷にも適していることである。18世紀末に英国人ビューイックが創始したとされる。日本では1887年に伝えられ、教科書や新聞の挿絵等、実用面で広く普及したが、写真製版が発明された後、衰退していく。芸術的な木口木版の制作では山本鼎や長谷川潔などが有名。ところで、木口木版に対して、縦挽きした切り口(板目の表われる面)で制作するものを板目木版と呼び、西洋と逆に日本で木版画といえば、こちらの方が一般的である。 |
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