この本の初版が刊行された一九一二年は、キュビスム運動の全盛期。著者の
グレーズとメッツアンジェは、同十二年に
レジェやジャック・ヴィヨンらが結成したキュビスムの
抽象化を推進するグループ「セクシオン・ドール(黄金分割)」のメンバーである。翌十三年には、英語版、ロシア語版が、十五年には日本語版(蘇武緑郎訳『キュービスム』向陵社)が出版されるほど広く普及した。二人は、画家でありながらキュビスムの理論的指導者としても目されるようになり、
グレーズは、
バウハウス叢書第十三巻として『キュビスム』(一九二八年)も著した。一九四七年に再刊された同書には、
ピカソ、
ブラック、
レジェ、
グリスら十一人の作家の版画が収録されている。(「本と美術−20世紀の挿絵本からアーティスツ・ブックスまで」図録 2002年)