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あけぼのむらものがたり あけぼの村物語
文学の世界にルポルタージュ文学というジャンルがあります。それと同じように、一時期の山下の作品を「ルポルタージュ絵画」と呼ぶことがあります。実際に現場に足を運び、そこで取材したことを作品を通じて社会に訴えようとしたのです。「あけぼの村物語」もそのひとつです。1953年に山梨県曙村(現在の中富町)で起こった地主と村人との騒動に取材しています。山下は村人の立場に立って、この事件を広く社会に訴えようとしました。 この村の地主は、戦前から村人を人とも思わない扱いを繰り返し、借金のかたに病人の布団を引きはがしたり、子供をだまして土地の権利書を取り上げたりしていたということです。戦後、村人は結束して立ち上がりましたが、抗議行動り先頭に立っていた若者が、ある日河原で怪死体となって発見されました。画面に描かれた血の海に倒れる人物がその若者です。画面右の首をくくる老婆は地主が経営にかかわっていた銀行の偽装倒産で預金を失った老婆を表し、中央に首をうなだれる農民が手にする青麦は、地主が強引に計画を変更して村道を自分の持ち山に通したため、収穫前に抜き取られた村人の麦を示しているということです。美術を言葉どおり美しいものと考える人は、この作品を前にしておそらく当惑されることと思います。また芸術が俗世間を超起した存在だと考える人にとっても、理解を超えた作品でしょう。この作品だけではありません。山下が残した作品郡は、私たちが目をそらしてやり過ごしてきた社会の暗部を執拗(しつよう)に訴え続けています。山下にとって絵を描くという行為は、社会とかけ離れた行為ではなく、積極的に社会とかかわっていくための手段だったといえるでしょう。
カテゴリー:作品
ロマン主義とは?【 美術用語 】 19世紀前半のヨーロッパの美術潮流。ロマンという語は、俗語で書かれた文学を意味した中世フランス語に由来し、そこから非現実的要素だけが取り出されて伝奇的・空想的意味に用いられ、18世紀には悲愴的美、崇高美と結びついた新しい美的感覚をあらわす基本的な概念となったものである。ドイツでは18世紀末から〃イエナ・ロマン派〃によって生活態度における最高概念まで高められた。ここでは、ロマン的現代とは有限と無限、自然と精神の分裂の時代であり、その中で有限なものの中で心情を無限なものと一体化させることは美的態度によってのみ可能であると考えられた。このようにロマン主義とはいわゆる造形活動上の様式概念ではなく、作家の制作態度にかかわるものであるので、特定の形式や統一的様式はもたず、またロマン主義に含まれる作家に様式上の共通点は見られない。代表的作家は、ドイツでは絵画のフリードリヒ、ルンゲ、建築のシンケル、フランスでは絵画のドラクロワやジェリコーらがいる。 |
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