<百花鬪芳>には、台の上の花器や釣るされた二つの籠から、数多くの花が溢れ出すようにして描かれている。さまざまな種類の花があるが、丹念に一つ一つの形が捉えられており、過剰と思えるほどの華やかさである。淡い筆触によって形を捉える部分と、濃淡で強調する部分の強弱のつけ方などを見ると、和亭から受け継いだ、明清の花鳥画の学習がベースにあることがわかる。水墨を主体にしながら、色彩を加える表現である。その基礎のうえに、写実化や奥行き、濃彩による表現がつけ加えられていった。(「近代日本画への道程 「日本画」の19世紀」図録 1997年)