作家名:
入江波光
制作年:1938年
技 法:紙本墨画 軸装
漁からの帰り、港に近づいたのであろう、岩礁のあいだを通り抜ける2隻の舟は帆を下ろしながらゆっくりと進む。降りかかる雨もおだやかで、仕事を終えた安堵と和みを感じさせる。波光が好んだ風雨の図だが、点描のように打たれた墨の飛沫が雨の情景をより演出している。前景の濡れた岩肌、遠景の稜線や樹木が墨の滲みで表現されているのに対し、舟と舟を操る船頭は細くこまかい線で描かれており、二つの描法が見事に調和した波光50歳の代表作品といえる。(「日本の美−再発見 富山県水墨美術館収蔵作品集」 2005年)