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イベルス



異邦人の訪問



今尾景年



今中素友



今西中通



「今はここで努力しよう。」



今村紫紅



イメージの解剖学



イヨクインデュストリデザイン



刺草(いらくさ) エルメスジャポン HERMES PARIS 10.28-12.30 2001



入相告ぐる頃



入江波光



入口,入口



イリブ



色の点になれば



〈色の伝説〉



岩倉寿



岩崎教章



岩につながれたアンジェリカ



岩の聖書


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いわのせいしょ

岩の聖書


作家名:荒木高子
制作年:1993年
技 法:陶
土や砂、シャモット(焼いた陶土の粉末)などで本のページや形を作り、そこに聖書の文字をシルクスクリーンで刷ったあと、最後に焼成してできた聖書。印刷物を転写してから焼成する方法を一九七〇年代初頭から試みていた荒木高子が、聖書のシリーズを始めるのは一九七八年のことである。一九七九年の第五回日本陶芸展で〈聖書シリーズ(黄金の聖書、砂の聖書、燃えつきた聖書)〉が最優秀作品賞を受賞し、その後、砂の聖書、石の聖書、岩の聖書、黒い聖書等々、数々の作品が作られている。「書物の中の書物」と呼ばれる聖書。印刷術の発明されていなかった中世のそれは写本であり、同じものを複数は作れない。ただ一冊のものであった。そして、その聖書は教会の中で鎖につながれていて、誰でも読めるというものではない。仮にページを開いたとしても文字を読める人の少なかった時代。それは、読むものでありながら、重々しく聖なるアウラを放ちながらそこに在るものであった。荒木の聖書もまた、読むことはできない。それは、崩れ落ちていく様相を見せながら、そこに在る。そこから喚起されるのは、単に一つの宗教の教えに対する信仰心といったものにとどまらない。荒木自身もクリスチャンではない。高温の火で焼き固められることによって、人類の長年にわたる宗教的な営みも、この作品に対する作者の造形的な人為の痕跡も浄化された聖書は、黙して語らない。そこから呼び起こされるのは、現代の人間でも持ち合わせているはずの、人知の及ばないものに対する原初的な畏れや悲しみといったものではないだろうか。(「本と美術−20世紀の挿絵本からアーティスツ・ブックスまで」図録 2002年)


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けんさくけっか

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徳島県立近代美術館2006