松方正義は薩摩出身の政治家。明治14年大蔵卿に就任、インフレ解消のための紙幣整理と官業払い下げを行い、日本の資本主義に産業革命期をもたらすことになった松方財政で知られる。その後も蔵相を歴任し、明治24年、29年と二次にわたり内閣を組織した際も蔵相を兼ね、二次内閣時には金本位制を確立させるなど明治財政を担った。 明治31年に完成した《西郷隆盛銅像》のような自由闊達な動きと着衣の流麗な表現が見られずに全体に硬い印象を与えている。
モデルの松方は当時第一次内閣を組織しており、威風堂々たる姿で表現した結果とも考えられるが、肖像彫刻として初めて手掛けた作品として試行錯誤の跡と見ることもできる。(「
高村光雲とその時代展」図録 2002年)