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かがみのまえのよそおい 鏡の前の装い
化粧室の鏡の前で、一人ポーズをとる若い貴婦人。これから始まる夜会の身支度であろうか、髪飾りのレースを喉もとでゆるく結ぼうとしている場面である。顔をわずかに左にかしげて、鏡の中の自分と対話する心たかぶる瞬間。豪華なルイ王朝風の化粧台、鏡の前の花飾りのある水色の香水瓶、暖色調の華やかな壁やじゅうたんの模様、中国風の大きな花瓶に活けられた花、そして何よりも花模様をあしらった豪奢なピンクと白のドレス。これら画面上の衣装や小道具のすべてが、この若い女性のいくぶん高揚した気分や、うっとりとした表情の引き立て役となっている。化粧室に閉じこもっている女性の周囲には、不思議と濃厚な雰囲気が漂うものである。この部屋は密室で、おそらくベッドルームであるアルコーヴにつながっているのであろう。いわば裸身のくつろぎの場で、バルザックやスタンダールの恋愛小説の主人公が身を焦がしたのもこのような部屋であった。「化粧する女」という主題は、たしかにフォンテーヌブロー派の時代から存在し、いかにもフランス的な色香とエスプリをふりまく素材として愛好されてきた。作者は、この絵のように化粧する女性を斜め後ろから眺め待つ、という特権的な経験をもったことがあったのであろうか。覗き見るようでいながらも、甘美な親密さというものがあふれている愛らしい作品である。ルージュロンは、ワインの産地として有名なブルゴーニュ地方のジュヴレイ・シャンベルタンに生まれ、アカデミスムの画家ピコとカバネルに絵を学んだ。カバネル門下のアンリ・ルニョーとは友人で、主にスペインで活動したと伝えられる。1869年から80年までサロンに出品したが、印象派の外光主義に対抗するということはなかった。普仏戦争で、28歳の若さで死んだルニョーと同じように、ルージュロンも豊かな才能に恵まれながら39歳でその生涯を閉じた。(「近世フランスの絵画と版画−東京富士美術館コレクションによる」図録 2002年)
カテゴリー:作品
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アングルとは?【 作家名 】 19世紀のフランスに起こった古代への回帰の潮風に対応する新古典主義を代表する画家。アカデミズムの粋を逸脱することなく、伝統的な主題を取り上げ、正確な線による理知的な画面を制作した。 画面右にこのキーワードの再検索結果が表示されています。そちらもご覧ください。 |
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