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さんみっしぇるきょう サン・ミッシェル橋
ユトリロは、パリのサン=タンヌ精神病院で、アルコール中毒の最初の治療を終えたばかりであった。母、シュザンヌ・ヴァラドンの住まいであったモンマルトルのコルトー通りで「アルコール中毒」の発作を起こしてから、入院は3カ月間に及んだ。独りになって、ユトリロはモンマニー(フランス、ヴァル・ドワーズ県)の母方の祖母の所に逃れ、漫画を模写して過ごし、やがてデッサンに時間を費やすようになり、そして母親のシュザンヌ・ヴァラドンのように絵筆を取る決心をした。ユトリロは、大芸術家を気取る、母のようになりたいと願っていた。彼はまず、田舎で絵を描き始め、そしてパリで描くようになた。しかし、モンマルトルの腕白小僧たちや野次馬の嘲笑の目から隠れるために、彼はひそかにセーヌ河岸へと逃れた。これが芸術家としてパリを眺めた、最初であった。シスレーの影響を受けて、ユトリロは印象派の手法で描き始めたが、それでも、その個性は失われてはいない。「いつか、みんなが僕のことを話しているのを、聞くようになるよ。ちょうど、シスレー、シスレー、シスレーを話すみたいに……」。居酒屋でユトリロは、なんども、ろれつの回らない口調で、赤ワインをおごられるたびに、こう話していた。ユトリロ自身、水は好きではないと認めていたにも拘わらず、彼は美しい海景画を1点、完成させたばかりであった。彼は黄緑、光沢のある色彩、テール・シエンナ(土色)に近い、カーマイン・レッド、エメラルド・グリーン、ウルトラマリン・ブルーといった色調の絵具を、白亜、亜鉛白、卵黄で出来た、緻密な原料を使って練り上げた。(S.K.)
カテゴリー:作品
トランス・アヴァンギャルディアとは?【 美術用語 】 1980年代に入ってからの現代美術の新しい傾向の一つで、一般にはその表現的な性格から、新表現主義(Neo−expressionism)といわれているもので、これがイタリアでは、トランス・アヴァンギャルディアとよばれている。1960年代以降のミニマル・アートやコンセプチュアル・アートなどのように、芸術はしだいに観念的な傾向を色濃くしていたのだが、その偏った傾向により、造形的に貧弱なものになりつつあった。そのことへの反動として、トランス・アヴァンギャルディアにおいて作家たちは、色彩や形態などの点で、自由で具象的な傾向を前向きに表現しようとする姿勢を示した。これは過去の表現主義やフォーヴィスムを見直すことによって、作品の中に野性的な活力をみなぎらせようとしたもので、粗野で素朴だが荒々しい魅力に満ちていた。 |
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