ここはコルトー通り12番地で、
シュザンヌ・ヴァラドンがポール・ムジスと住もうとやってきた所である。1911年にムジスと離婚したあと、
ヴァラドンは同じ建物の中にあった“屋根裏部屋”と名づけられたエミール・
ベルナールのアトリエを独りで使っている。そのアトリエは現在モンマルトル美術館にある。 この作品では、白く大きな塀に挟まれた人のいない通りが描かれており、塀をうまく配置できるように、向こうの建物に続く道を広めにしている。きれいな白とよごれた白が、分厚いざらついた塀にべったりと塗られている。ほかの壁はサーモン・ピンクや黄色、灰色、緑といった色のマチエールで塗り込められ、歌を奏でているが、そこでもさまざまな白が雄弁に振る舞っている。暗い赤は、傷んだ漆喰壁のしみを隠している。この絵の通りには、道路工事をしたり壁を修理する必要がある。そしてここは、
ユトリロの人生に栄光と卑屈、喜びと苦しみをもたらすことになる道なのである。(K.S.)