ユトリロ−モンマルトル、
ユトリロ−壁、
ユトリロ−風景、
ユトリロ−教会。そして「天啓」のときが近づくとき、
ユトリロは自らの信仰を秘め隠すべくもう一度一枚の教会の絵を描く。 信仰しているいないにかかわらず、
ユトリロがほかの人のことを懸命に考えたかどうかはよくわからない。しかし、もしまったく神を信じていなかったのなら、トゥールラック通りから、「テリブル・マリア(恐るべきマリア)」(母
ヴァラドンのこと)の所まで通ったりすることはまずなかったであろう。
ユトリロの祖母クーローは、昔からのしきたりどおり朝夕、幼い
ユトリロにベッドの脇にひざまずかせ祈りを捧げさせた。
ユトリロは、子供のころから厚い信仰を厳しく躾られて育ったのである。絶えず
ユトリロを悩ませた母のせいで、
ユトリロは女性に無関心になり、自らの神秘主義的な信仰を守る新しい建物を作り出すことになったのであろう。内面では光は心の傷となり、外面では光は心の中の道を照らし出す。(K.S.)