1891年に木版を始めた
ヴァロットンは、翌年には既に、
リヴィエールと同じように北斎の『富嶽三十六景』に倣った、
スイスの山々を描いた木版の連作を制作している。
ヴァロットンの版画の多くは黒の一色刷で、対象を最も単純な形態へと還元させ、図の黒と地の白との巧妙なバランスを作り出している点に特徴がある。この小作品でも、波と月か太陽は非常に単純な線の繰り返しと黒い丸で表現されているが、とりもなおさず、遠くにいくに従って薄くまばらになっていく波の線は、奥行きと水に反射する光を示唆している。(「世紀末から 西洋の中の日本「
ジャポニスム展」図録)