西洋中世の
木版画等から学び、
抽象化された様式で諷刺絵などを寄稿していた
ジョソは、同時代の多くの版画作家同様、日本の
木版画にも影響を受けていた。この作品は明らかに北斎の『富嶽三十六景』の中の《神奈川沖裏》から波の形や波に呑まれる舟などを借用している。だが、その舟から投げ出されるのは漁師ではなく、左端のイーゼルとカンヴァスからもわかるように、西洋画家である。さらに解釈すれば、
ジョソは戸外に出て直接自然を描こうとした
印象派の画家たちと、彼らへの日本美術の影響を揶揄していると思われる。
ジョソ自身は日本美術よりも中世美術に負うところが大きかったので、そのような客観的な諷刺もできたのであろう。そのことはこの作品が、
リヴィエール等多くの日本美術に影響を受けた作家たちの寄稿した『
エスタンプ・オリジナル』誌に含まれたものであるということを考えれば、不思議ではない。(「世紀末から 西洋の中の日本「
ジャポニスム展」図録)