本展出品の
カサット作品は2点とも彼女の初期の作品で、簡素で繊細な
ドライポイントの線だけが基調となっている。
モデルは同時期の作品に頻繁に現れるメイドのマティルドで、
カサットに極めて身近な日常生活の営みを描いている。同時代、女性を対象に様々な身ぶりを描いた画家に、
カサットとも親しかった
エドガー・ドガがいたが、彼は早くから浮世絵から大胆な構図等を学んでおり、1890年の浮世絵展を待つまでもなく、
カサットは間接的に
ドガや周辺の
印象派の画家たちを通して日本美術の影響を受けていたと言える。それは、画面左下の机が西洋的な
遠近法を無視して、画面の平面に沿うような方向に描かれていること、また対象の細部の省略等に顕れている。(「世紀末から 西洋の中の日本「
ジャポニスム展」図録)