専ら雑誌の挿絵画家として活躍した
エルマン=ポールであるが、1890年頃に、
石版画の制作も始め、フランスの日常生活を近接描写した多色刷版画を数多く残している。彼の挿絵作品には社会諷刺と滑稽味があふれているのに対して、
石版画作品では、主題よりも構図や色彩で実験を試みることに一番の関心があったようだ。
アカデミー・ジュリアンを通じて知り合った、
ボナールや
ヴュイヤール等、
ナビ派の画家たちの作品に様式的に近く、近接視の視点、形態を平面として捉えている点、画面を斜めに横切る線、中間色の使用等に、
ジャポニスムの影響が見られる。(「世紀末から 西洋の中の日本「
ジャポニスム展」図録)