作家名:ウジェーヌ・デイジー
制作年:1896年彫版
技 法:
エッチング
この作品は、
シャルダンの最も知られている作品の一つを複製したものである。その
シャルダンの作品はルーヴルに収蔵されており、1740年のサロンに出品された最初の作品は、彼自身の手で、サロンの後、間もなく、ルイ15世に贈呈された。この作品のタイトル「食前の祈り」は、ラテン語に由来し、「祝福あれ」を意味する。即ち、カトリックの信者が、食事の前に唱える祈りの最初の言葉である。画家においては、けっして目新しいテーマではなく、17世紀のオランダの画家がしばしば描いたものである。17世紀の北欧絵画に馴染んでいた
シャルダンが受けた影響は、ここに明らかに表れている。祈りの言葉を教え、繰り返させる為に、食卓と彼女の二人の子供たちの方へ優しく体を傾けている母親のまわりに、静物描写の優れた画家であった
シャルダンは、数多くの家庭生活の日常的な
オブジェを描いている。おもちゃや小皿、フォーク、ポット、柄のついた酒壷などは、母親によって二人の子供たちに支給される食事の時を正確に想起させる。しかし、
シャルダンは挿話的なあつかいから脱する術を心得ていた。従って、彼はやさしさにあふれた感動的な作品を創ることができた。彼が版画を通して広めたこの内証は、永遠に保ち続けている聖なるイメージを明らかにしたものである。(「近世フランスの絵画と版画−東京富士美術館コレクションによる」図録 2002年)