1855年から始まった「編物をする羊飼いの女」の総決算的な作品であり、その寸法からもGRANDE(大)と呼ばれている。これまでの比較的単純な背景から一転して、奥行きを見せる巧みな構図へと進歩し、
エッチングの刻線も以前の一種鈍重な真面目さから解放された自由闊達な表現が魅力的である。習作
素描の人物のディティールを、
エッチングでは陰影でつぶしてしまった点も、版画家
ミレーの面目を示すものといえよう。「
エッチング作家協会」の編集人A.カダールの注文による作品と考えられているが、
ミレーはカダールが原板の破棄を要求したため協会には入らなかったと伝えられる。(「近世フランスの絵画と版画−東京富士美術館コレクションによる」図録 2002年)