版画家
ブラックモンは1915年に友人の
ドラートルの家で、日本の陶器を入れた箱の中に詰められていた北斎漫画を発見したことから、西欧の
ジャポニスムの火付け役として、名を挙げられることが多い。さらに1866年、
ブラックモンは北斎漫画などから模写した鳥や花の
モティーフや彼自身の作品の
モティーフをもとにルソー食器セットをデザインしたが、その和洋折衷の様式は当時のヨーロッパで人気を博し、多くの陶器製造会社がそれをまねた。自由な筆遣いを生かしたこの扇面画は、様式的にルソー食器セットの二つ目のデザインに近く、同じ時期に製作されたと考えられる。雲に見えかくれする月を中心にして、左手に男女のカップル、右手に芥子の花を配されているが、これらの
モティーフには意味の上での繋がりはないようである。その寄せ集めの手法はルソー食器セットのデザインでも顕著に用いられている。(「世紀末から 西洋の中の日本「
ジャポニスム展」図録)