シャデル晩年のこの作品は、様式的に見て19世紀末のポン=タヴェン派や
ナビ派に近い。平面的で装飾的な模様へと
抽象化された山や丘はゴーガンのブルターニュ風景を思わせ、炎のように立ち上がる木々は
ゴッホの糸杉を思わせる。それと同時に、画面全体を覆う黒の輪郭線は、
シャデルが長年専門としてきた
木版画から示唆を得たものであるかもしれない。極端に横長の形式や金色の使用、全体の渋い色調は、日本の屏風絵などの装飾美術の影響を強く示している。(「世紀末から 西洋の中の日本「
ジャポニスム展」図録)