アントワーヌ・モルティエは
リスモンドと同年の生まれの、
ベルギー美術界の重鎮作家の一人である。もともと彼は彫刻家を志望し、15歳の時から装飾彫刻のアトリエで働いていた。それと並行して美術
アカデミーの夜学に通い彫刻コースを専攻、絵画については30歳を越えてからほぼ独学で始めた。初期の頃の彼は
ベルギーにおける
表現主義の絵画、特にコンスタン・ペルメークやギュスターヴ・ド・スメットらの影響から出発し、
ベルギーの民衆、農民の生活をテーマに大地の色を追求した重厚な作品を制作していた。戦後、フォーヴィスム風の激しい筆致による作風へと展開していたが、まもなく太い輪郭線で絵文字のような形態を描いた
抽象的作風に変わっていった。さらに1984年「ウルトモ(最後の)」から新たな展開を見せた。
モルティエも地下鉄の駅に
モニュメントを制作しているが、その作品「ピエタ」は戦いによって死んでいった兵士たちへの鎮魂の思いが込められている。(「
ベルギー現代美術展」図録 1994年)