作家名:ディーター・
ロート
制作年:1976年刊(1957年刊を再編集)
技 法:紙、フィルム、本
ディーター・
ロートの活動も、ルシャと並んでアーティスツ・ブックスの原点と言われる。生涯に百点を超える作品を発表した
ロートは、すでに五十年代から本の制作を始めている。新聞記事の転写、チーズ、チョコレートを用いた版画、スタンプを押した様々なイメージ、文字組や点だけの構成、はたまた電球やソーセージを利用したものなど、その作品はきわめて多岐に渡る。今回出品するのは、
ロートがこれまでの作品を編集し直して出版した〈作品集〉からの五点。ルシャに比べると、
ネオ・ダダやフルクサスとの関連性が深いと言われる。第十巻の〈デイリー・
ミラー〉は、新聞のデイリー・
ミラー紙を拡大したものが綴じられている。同じようにして作った小さな豆本も二冊、ダンボールのカバーの中に収められている。身の回りにあふれているマス・メ
ディアの出版物。それを一方で拡大しながら、同時に小さく切り刻む。日々消費されるはかない印刷物を集積して、実用的なダンボールに収納する。そこに現れる本は、マス・メ
ディアに対する
ロートの愛憎の表現かもしれない。が、同時に感じるのは、単純に、ただ「本」にしてみたいという
ロートの意志である。(「本と美術−20世紀の挿絵本からアーティスツ・ブックスまで」図録 2002年)