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ちほうかんのあらそい 地方間の争い
ミシェル・ビュトール著、カミーユ・ブリヤン装丁。ミシェル・ビュトール著、ベルトラン・ドルニー装丁。一九五〇年代フランスのヌーヴォー・ロマンの作家ミシェル・ビュトールは、一九六二年の『出会い』以降、アーティストと協力して千冊近い本を作っている。今回出品するのは五点。版画による挿絵がついたオーソドックスな挿絵本の〈出会い〉。見開きが三ページ、いわゆる三幅対(トリプティック)になっている〈地方間の争い〉。アメリカの建国二百周年を記念して作られた、オブジェと本を青いアクリルケースに収めたボックス〈USA 76〉。一枚につき四ヶ所が欠けてガタガタになったカードの表裏に詩句が印刷されたものが二十枚、それらを様々に組み合わせることによって膨大な数の詩が生まれる。そんなカードとビュトールが朗読しボスールの伴奏がついたカセットテープ、笛、詩編が印刷されたアレシンスキーのポスターなどがセットになった〈詩「ドンファン」のための素材〉。コラージュされたジャバラ式のページにビュトールの手書き文字を印刷した〈街に沿って〉。この五点だけを見ても、考えられるありとあらゆる方法が試みられているのではないかと思わせるほど多彩な作品群である。アーティスツ・ブックス、フランス流に言えばリーヴル・ダルティストとは何か、という問には、いまだに明確な答えは見当たらない。しかし、ビュトールのこれらの美しい本、楽しい本、工夫の凝らされた本を見ていると、そんな定義や分類はともかくとして、その本を読んでみたいと切実に感じさせられる。それはおそらく作家であるビュトールにしても同じ思いなのだ。アーティストたちとの本作りから、作家自身の書くものが更新され、変貌させられる喜びと期待感。作家とアーティスト、そして読者との幸福な関係。それ以外に何が必要なのだろうか。(「本と美術−20世紀の挿絵本からアーティスツ・ブックスまで」図録 2002年)
カテゴリー:作品
リトグラフとは?【 美術用語 】 版画技法。石版画。平版(版面に凹凸のない版形式)の代表的なもの。版材に石灰石や、今日では人造石灰石や亜鉛板、アルミ板も用いる。製版の原理は水と油の反発作用である。即ち石灰石に脂肪性のクレヨンや解き墨で描き、上から硝酸アラビアゴム溶液を掛けると、化学作用によって描画部は親油性に、他の部分は親水性になる。こうして版面に油性インキをローラーで転がし、描画部にのみ付着したインキをプレス機で紙に刷り上げる。亜鉛板等を用いる場合も、水と油の反発を応用することに変わりはない。18世紀末にゼネフェルダーがドイツで発明し、当初は近代的な複製出版技術として、広くヨーロッパに普及した。19世紀中頃には多色石版画、続いて写真製版も登場し、リトグラフは商業印刷の分野で急速に発展する。19世紀末の芸術的なポスターの隆盛は、この技法を抜きにしてはあり得なかった。今世紀に入いってからも、ピカソ、マチス、ルオー、シャガール等、多くの作家がリトグラフによる表現を意欲的に追求した。 |
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