こども園の見学レポート(2022年6月)
亀井幸子(徳島県立近代美術館係長) 久米千裕(同学芸員) 飯田恵実(同学芸員)
みつぼしこどもえん(徳島市)に通う子どもたちが美術館で作品鑑賞を行った様子をレポートします。
令和4年5月18日(水) 5歳児クラス(20人)の子どもたちが美術館に来てくれました。
3歳児クラスのときに美術館デビューして以来、今回の見学は8回目。
展示室で作品を鑑賞したあと、美術館3階にあるアトリエでお絵かきをしました。展示室で見た作品を描いている子、気持ちよさそうに線を描いている子、お気に入りの色を夢中で塗っている子など、みんな自由にお絵かきを楽しんでくれたように思います。
令和4年5月31日(火)、6月1日(水) 4歳児クラス(23人)の子どもたちが美術館に来てくれました。
※密を避けてゆっくり鑑賞できるように1クラスを半分ずつ2日に分けて来館
まず、絵を見る前に「おやくそく紙芝居」を見て、展示室でのマナーを学びます。
「えをみるときは てはうしろ」
「てんじしつはゆっくりね」
「おはなしはありさんのこえ」
「えをみるときは てはうしろ」にすることによって、つい作品に触れてしまうことを未然に防ぎます。職員が説明をすると、みんなが手をうしろにしてくれました。
「てんじしつはゆっくりね」と言うことによって、展示室内で走ってはいけないこと、ぶつかって作品を壊してしまう恐れがあることを知ってもらいます。
「おはなしはありさんのこえ」は、他のお客さまに配慮する上で大切なことです。「ライオンのこえ」「ワンちゃんのこえ」「ありさんのこえ」の中から「どれくらいの声の大きさでお話しすればいいかな?」と聞き、展示室内での適正な声量を想像してもらいます。
子どもたちと特別展「カミのかたち」を鑑賞しました。
「カミって見たことある?」「髪の毛?」「ペラペラの紙?」「おうちでみたことある」
と、たくさん教えてくれました。
この展覧会には神様の姿を表現した絵画や彫刻が展示されています。カミサマってなんだろう?どんな姿なんだろう?
展示室に入ってまず見たのが下村(しもむら)観山(かんざん)の〈毘沙門天(びしゃもんてん) 弁財天(べんざいてん)〉です。「お姫様みたい!」「(琵琶(びわ)のところに)ゾウさんがいる!」と、思い思いに絵の中から見つけたものについて話してくれました。
イブ・クラインの〈ブルー・ヴィーナス〉を見ました。青色だったはずなのに場所を変えて見ると紫や黒に見えておもしろい!どういうポーズしているのかな?なんで顔や腕、足がないの?不思議が止まりませんでした。
子どもたちは昨年度3歳児クラスのときにも4回来館してくれており、展示室内にあったアリスティード・マイヨールの〈着衣のポモナ〉のことを覚えていてくれました。
R3年6月8日、9日 (3歳児クラスのときの見学の様子)
〈着衣のポモナ〉は、普段、所蔵作品展の展示室1と展示室2の間の通路に展示されていますが、今回は特別展のテーマに合わせて展示室の中に移動させています。そのため、「前と違う所におる!」と気づく子がいました。子どもたちの記憶力の高さには驚きです!
鑑賞が終わると、3階のアトリエでお絵描きをしました。長いロール紙を床に敷き、ペンやクレヨンで自由に描きます。中には全身を使って歩きながら線を引く子もいました。
令和4年6月2日(木)、3日(金) 3歳児クラス(20人)の子どもたちが来てくれました。
※密を避けてゆっくり鑑賞できるように1クラスを半分ずつ2日に分けて来館
彼/彼女らにとって今日が美術館デビューの日です。「おやくそく紙芝居」を見た後、二班に分かれて展示室に入りました。
まず初めに見たのが徳島ゆかりの作家が描いた静物画です。画面にはテーブルの上に置かれた美味しそうな食べ物が描かれています。リンゴ、トマト、ブドウ、、、。何が描かれているのかについてみんなでお話しました。
次に屋外展示場に出て彫刻作品を見ました。
ふとっちょなフェルナンド・ボテロの〈アダムとイヴ〉に、のっぺらぼうでちょっと怖いリン・チャドウィックの〈腰をかける人〉。大きな彫刻作品と小さな子どもたちのコントラストがとても面白かったです。
作品を見ていると、ある子が作品の近くを歩いていたカマキリを見つけました。すると、みんなの関心が一斉にカマキリへ。カマキリさんも作品を見ていたのかな?
再び、展示室に戻ると別の班のお友達と合流しました。
そして見たのが、奈良美智(ならよしとも)の〈UNTITLED(BROKEN TREASURE)〉です。左手に折れたふた葉を持っている女の子が、画面上方を見上げるようにして立っている絵です。明るい画面の作品ですが、描かれている女の子の目つきは鋭く鑑賞者に何かを訴えかけています。
怒っているのかな?悲しんでいるのかな?中には表情のマネをしてくれる子や、ポーズをマネしてくれる子がおり、体を動かしながら作品についてお話ししました!
不思議がたくさん溢れる美術館でお友達と探検できたみたいです。
ぜひ、また美術館に遊びに来てください。楽しみに待っています!
『もこ もこもこ』(1977年、作:谷川俊太郎)の挿絵を担当した元永定正の作品を見て「園で見たことある~」と生活とつながった声が聞けました。
何を言っても受け止めてくれるという雰囲気があり、子供たちが楽しそうにしている姿が見られました。
同じ絵を見ても「楽しそう」と思う子もいれば「怖い」と思う子もいました。感じ方が全然違うのが面白くて発見です。