美術館と6年生の子どもたち
「美術館の仲間たち」ページ開設によせて
富田小6年生(H20年度卒業生)の子らと美術館の出会いは、彼らが3年生のとき。当時3年1組だった子どもたちは、パウル・クレーの「子供と伯母」の鑑賞活動を核にした合科的単元活動「クレーさんとお話をしながら」に取り組んでいました。その鑑賞活動の中で生まれた14の物語を、実物作品となる「子供と伯母」の前で、どうしても朗読させてもらいたくて、徳島県立近代美術館にやってきたのが始まりです。その後、美術館の安達さんや竹内さんの計らいでクレー作品との鑑賞活動の足跡を美術館に展示させていただきました。学年の終わりには、3年生全員で「巨匠デ・キリコ」展にも出かけて行き、小さな扉カードから不思議な謎の世界を夢中で覗き込みました。
「吹田文明」展で「音のかくれんぼ」をさせてもらったのは4年生のとき。わんぱくたちが耳をすませて作品と対峙する様は、吹田さんの描く宇宙の世界をふわりふわりと遊泳しているようだったかもしれません。子どもたちによって見つけ出されたいろいろな音は、竹内さんの手によって新しい居場所が与えられ、今も一冊の詩画集の中に、吹田作品と一緒に堂々と並んでいます。
このような活動を通して、美術館は、作品はもちろんのこと自分や様々な人をアートでつなげてくれる扉であることを、子どもたちは感じとってきたことでしょう。6年生の夏、今度は自分たちが、作品や人との出会いを生み出す美術館を開こうと、学校を舞台とした一夜限りの「ナイトミュージアム」を開催しました。自分たちがつくった巨大作品の前で、ギャラリートークをしながら、たくさんの地域の人と楽しい一夜を過ごすことができました。そして、自分たちも人と人をつなげることができる「アートの扉」であることを実感することができたのではないかと思っています。
そんな子どもたちが、小学校最後の図工科単元として取り組んだのがこの「美術館の仲間たち」です。今度は、世界中の人とつながる「アートの扉」をつくろうと自分たちの鑑賞活動をもとに徳島県立近代美術館の所蔵作品を楽しく紹介できるWebページをつくりました。子どもたちがそれぞれに紹介した作品は、ワークシートという絨毯に載せられて自分のところにやってきた作品たちです。初めて見る作品という子もいれば、なんとなく避けてきたちょっと苦手な作品と向き合うことになった子もいました。でも、自分から寄り添う気持ちがあれば、きっと大切な仲間になれると、プロフィールを書いたり模写したりしながら対話を重ね、この紹介ページをつくりました。
美術館の面白さや楽しさを誰よりも知っている子どもたちがつくった「美術館の仲間たち」。このページが、たくさんの方の「アートの扉」となることを心から願っています。
徳島市富田小学校 6年1組担任 田浦良浩
6年2組担任 濱口由美