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T R A U M V O N W I E N G R A P H I S C H E K U N S T E I N W I E N U M 1 9 0 0 |
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4. 印刷アートの面白さ
ウィーンから国内に届いた出品作を広げてみて、 もちろんこの時期の大きな流行としてジャポニスム(日本趣味)があったことは無視できませんが、作家たちはその図柄や自然へのまなざしにとどまらず、紙や版材に対する感覚すらウィーン流に解釈し楽しんでいたふしがあるのです。中にはまだまだ未熟な試し刷りなども含まれていますが、刀や糊や木と紙の風合いに挑む熱気がひしひしと伝わってきます。それはもちろん造形の技術的な話なのですが、決してそれだけではなく、見る人の手にわたる図像を作っているという熱意―言い換えればヴィジュアル・コミュニケーションに対する信頼を、そこに見出せるような気がしました。美しく写真印刷された今日の研究書や画集を見ているだけでは、絶対に感じることのできない息づかいが実物には宿っているのです。
世紀末(20世紀の)をすでに体験した私たちにとって、 (主任学芸員 竹内利夫) 「徳島県立近代美術館ニュース 45」
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