徳島県立近代美術館
学芸員の作品解説
学芸員の作品解説
裸婦像
セメント
26.0×11.0×10.0
セメント
26.0×11.0×10.0
中川為延
生地:
生地:
データベースから
中川為延裸婦像
他の文章を読む
作家の目次
日本画など分野の目次
刊行物の目次
この執筆者の文章
中川為延 「裸婦像」
安達一樹
この作品は、高さが26センチと、美術館が所蔵する彫刻としては、かなり小型のものです。素材は白色のセメント、木製の円形台座が付属していて、それには「小野田セメント株式会社」と記された銘板がつけられています。1962年に樫野石灰株式会社より徳島県博物館に寄贈され、1990年に近代美術館ができたことにより、美術館の所蔵作品となりました。さて、彫刻の素材=何でつくられているかを考えてみると、木、金属、そして石などがまず思い浮かぶことでしょう。この他に土、石膏、紙、ガラス、最近のものとしてFRP(繊維強化プラスチック)や発泡スチロールなどがあります。広く考えれば雪や氷でも作れます。要は、固まるものであれぱ何でもいいわけです。どの素材が使われるかは、表現される内容、素材が持っている性質、質感、扱いの難易、価格、そして作品の置かれる環境(耐久性、安全性)、時代などによって決まります。
この作品で使われている白色セメントという素材は日本の戦後の野外彫刻に、一時代を画した特筆すべき素材です。基本的には小野田セメントが主に壁塗り用の材料として戦後まもなく開発した商品です。しかし、物資不足の時代、彫刻家の関心を集めるとともに、メーカーも彫刻用素材として普及に努めました。セメントそのものは、戦前から用いられていましたが、この新素材は、従来のものに比べて優れた自在性を持ち、その白さもまた魅力でした。1950年、小野田セメントをスポンサーとして、主に白色セメントを使った野外彫刻展が始まります。戦後の野外彫刻展の嚆矢です。この展覧会のアドヴァイザーとして「白色セメント造形美術会」が発足し、中川為延も委員となり、中心的な役割を果たしています。
企業名の銘板を台座に持つ小像が美術館にある。これは大きな歴史の流れから見ればほんの些細なことかもしれません。しかし、今述べたように、この小さな作品は、私たちが歩んできた時代を語ってくれます。作品が語る、これは美術館の原点です。そして証言者を受け継いでいく、これは美術館の使命です。
徳島県立近代美術館ニュース No.10 July.1994 所蔵作品紹介5
1994年6月
徳島県立近代美術館 安達一樹
1994年6月
徳島県立近代美術館 安達一樹