徳島県立近代美術館
学芸員の作品解説
学芸員の作品解説
四国三郎
1990年
黒御影石
260.0×280.0×160.0
1990年
黒御影石
260.0×280.0×160.0
速水史朗 (1927-)
生地:香川県
生地:香川県
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速水史朗四国三郎
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この執筆者の文章
速水史朗 「四国三郎」
安達一樹
立体造形の素材として石も忘れることはできません。古代エジプト人は、あの巨大なスフィンクスをはじめ数多くの作品を制作しました。ギリシャでは、パルテノン神殿にとりつけられた彫刻群など、後世の芸術に大きな影響を与えた個展彫刻の黄金期を築きました。ルネサンス時代になると、ミケランジェロなどの巨匠を輩出し、続くバロック時代でも、イタリアにベリーニのような代表的作家がいます。近代では、有名なロダンも石の作品を制作しました。現代では、イギリスのヘンリー・ムーアや、バーバラ・ヘップワース、アメリカのイサム・ノグチなどが新しい展開を示しています。
使われる石の種類は、たい積岩、変成岩、火成岩の三種類に分けられます。たい積岩は、非常に細かい粒子からできており、軟らかく彫刻が容易という利点がありますが、同時に風化しやすいという欠点があります。この系統の石には石灰岩や砂岩があります。変成岩は、一般的に硬くて彫りやすい性質を持っています。この系統の石には大理石、滑石などがあり、立体造形の素材としてよく利用されます。火成岩は、最も丈夫で風化されにくい性質をもっています。この系統の石の代表的なものは御影石です。美術館が建物の外に設置している作品もこの御影石でつくられています。そのひとつに、速水史朗の「四国三郎」があります。この作品は、吉野川を象徴的に表したもので、文化の森総合公園の中で近代美術館と関連したエリアとして「創造の森」がありますが、その入り口に当たるところに設置されています。
なぜ石を用いるか。これは作家によってそれぞれですが、速水史朗は「土と石」という文章の中で次のように語っています。「土に甘え、どっぷりと首までつかってしまいそうな時、わたしは硬い石に立ち向かう。石は人を寄せつけない厳しさが表面に見える。そして人の力をはねつける。しかし石もやはり自然の生き物であることをそのうちに知ることになるだろう。土と石という一見、相反するような素材に立ち向かう日々であるが、それが一つになっていくはなぜだろうかと思うようになっている。たぶんそれは土も石もが人間くさい自然の素材であるからだろう」。
徳島新聞 県立近代美術館 14
1991年1月9日
徳島県立近代美術館 安達一樹
1991年1月9日
徳島県立近代美術館 安達一樹