徳島県立近代美術館
学芸員の作品解説
学芸員の作品解説
バロック・ポップ・バロン
1990年
ブリキ
223.0×56.5×57.0
1990年
ブリキ
223.0×56.5×57.0
秋山祐徳太子 (1935-)
生地:東京府(現東京都)
生地:東京府(現東京都)
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秋山祐徳太子バロック・ポップ・バロン
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所蔵作品選1995
徳島新聞 美術へのいざない
秋山祐徳太子 「バロック・ポップ・バロン」
吉原美惠子
この作品の素材はブリキと書かれています。ブリキというと、たとえばブリキのおもちゃやブリキのバケツなどがまず思い起こされるでしょうか。これらはいずれも近年、日常生活の中で見かける機会が少なくなってきているもののように思われますが、缶詰の缶などはますます身近にあって健在で、ブリキは私たちにはやはり親しみの持てる素材です。でも、もう少し正確に言うならば、この作品の素材はトタンなのです。建築物などの材料で、銀白色で、しならせるとペコンペコンと音がする、あのトタンです。雨粒がトタン板を叩く音などは、軽やかな調子で、素材を見たときにすぐさま、あの音が耳のどこかでよみがえってくるような気がしないでしょうか。そんな想いを充分に意識ながら、作家は、このなじみの素材を使って、男爵の像を作ってしまいました。よく見ると、この男爵の身に付けているものの、何と見事なことでしょう!立派な山高帽子を頭に載せ、衣装にはおそらく金色に光るボタンがたくさん付いているはずです。男爵をとても偉く見せている、豪華な肩章や勲章もみてとれます。目深に被った帽子の陰から、はにかみながらもやさしく、思慮の深そうな表情がうかがえます。どことなく漂う清潔感と品の良さは、彼の社会的な役割について考えさせてくれます。しかし他方で、私たちは、素材の持つ豊かな表情に惑わされもします。なぜなら、このノスタルシックでありながら、あっけらかんとした素材は、この男爵を道化のようにも見せてしまうからです。作品を鑑賞したとき、卜タンの質感がよみがえってきたら、どんな感じがするでしょうか。そうすると、この男爵が今度は安っぽく、嘘っぽく見えて、じつは金色に輝いているはずのボタンの鍍金が剥がれかかっているように見えたり、肩章もちょっぴりくたびれて見えたりするかもしれません。そしてそのために、この男爵が、どこかしみじみとした人生の哀しみや愁いをたたえているようにも見えてきます。じつは作家は、素材の持つ豊かな表現力を存分に活かしながら、一人の男爵の像を借りて、見事に現代社会における美術の役割といったものにまで言及しているのかもしれません。爵位を持った紳士が、じつは厚紙のように丸められたり、金属でのりづけされたりしているにも関わらず、やはり威厳を保とうとしていて、それでも背中にはJlSマークが堂々と記されてもいる・・・そんな幾重にも準備されたどんでん返しがこの作品の魅力のようにも思われます。徳島県立近代美術館ニュース No24 Jan.1998 所蔵作品紹介
1997年12月
徳島県立近代美術館 吉原美惠子
1997年12月
徳島県立近代美術館 吉原美惠子