徳島県立近代美術館
学芸員の作品解説
囚われる風景 V
1973年
エッチング、アクアチント、メゾチント 紙
45.0×56.2
中林忠良 (1937-)
生地:東京都
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中林忠良囚われる風景 V
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中林忠良 「囚われる風景 V」

竹内利夫

 東京芸術大学ではじめは油絵を専攻していたが、銅版画にひかれ、1965年東京芸術大学大学院版画専攻科を修了する。1966年には毎日現代日本美術展、73年には日動版画グランプリ展、82年には日動日本国際美術展で受賞する。また1977年には日本現代版画大賞展、78年にはソウル国際版画交流展など、多くの版画展に出品している。現在は東京芸術大学美術学部で教鞭をとる。
 初期には植物や海、大地など自然への関心が強く、しかも芽や花から根、そして細胞へとしだいに根源的なものへ向かっていった。しかし1970年代になり、師の駒井哲郎が没した頃から、しだいに社会的な関心を見せ始める。また1977年からの連作、〈Position〉及び〈Transposition〉では自然への関心が復活した。銅版画の技法に通じ、なおかつそこにとどまらず銅版画とは何かを見極めようとする彼は、日本の銅版画の最も正統的な作家であると評価されている。
 この作品は、彼の直面する社会の映像のいくつかが転写によって取り込まれながら、時代の閉塞を象徴する箱によって心理的な深まりを持つ光景へと置き換えられる〈囚われる風景〉のシリーズである。様々な銅版画技法が自覚的に操られて、あたかもコラージュのように画面に様々な要素を持ち込んでいる。
特別展「コレクションでみる 20世紀の版画」図録 第1部 戦後の展開 3. 日本の活況 (2)刷新者たち
1997年4月12日
徳島県立近代美術館 竹内利夫