徳島県立近代美術館
学芸員の作品解説
学芸員の作品解説
次の階を探してI
1996年
ダイレクトプリント、アクリル加工
180.0×720.0
1996年
ダイレクトプリント、アクリル加工
180.0×720.0
やなぎみわ (1967-)
生地:兵庫県
生地:兵庫県
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やなぎみわ次の階を探してI
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この執筆者の文章
やなぎみわ 「次の階を探してI」
吉川神津夫
タイトルにある「次の階を探して」とは、作品に登場する案内嬢たちの声のようにも聞こえます。「あなた(たち)の探し物はここにはありませんから、次の階を探して」というふうに。実際、彼女たちは案内嬢のコスチュームこそ身にまとっているものの、仕事はしていないようです。作者のやなぎみわがデパートの案内嬢に関心を持ったのは、芸大を卒業した後のことでした。記号化され、儀式のような動作を繰り返す女性の存在を奇妙に感じ、調べてみると案内嬢やコンパニオン・ガールといった職業は日本独自のものだったそうです。確かに、この作品の案内嬢たちは、立ち話をしていたり、くつろいだ姿勢をとったりしていますが、それ故に彼女らの存在の奇妙さが強調されているとも言えます。この作品のもう一つの特徴として彼女たちのいる風景があります。開きっぱなしのエレベーターの扉やウインドウのお花畑が非現実的な雰囲気を与えているのに加え、それらが果てしなく続いて暗闇の中に消えていくように見えます。この風景について、やなぎは次のようなことを言っています。
手前の明るい場所は心地いいのに、彼方の暗闇にどうしても行かなければならない、そんな強迫観念を感じる原風景を持ち続けている。
この自らの原風景に組み込むことによって、案内嬢という奇妙な存在がやなぎにとってリアルな存在へとなります。そして、観客もやなぎの原風景を体験するのです。
皆さんは、やはり次の階を探しに行くのでしょうか、それとも、彼方も暗闇に惹かれるのでしょうか。
(参考文献)『Ai .3号 やなぎみわ』(インタビュー&テキスト山下里加)
徳島県立近代美術館ニュース No.34 Jul.2000 所蔵作品紹介
2000年6月
徳島県立近代美術館 吉川神津夫
2000年6月
徳島県立近代美術館 吉川神津夫