徳島県立近代美術館
学芸員の作品解説
学芸員の作品解説
裸婦
1957年
油彩 キャンバス
129.3×194.4
1957年
油彩 キャンバス
129.3×194.4
カレル・アペル (1921-)
生地:オランダ
生地:オランダ
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アペル裸婦
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この執筆者の文章
カレル・アペル 「裸婦」
友井伸一
渦巻きのように、ぐるぐると塗りたくられた赤い絵の具。ここには、いったい何が描かれているのでしょう。ちょっと近づいてみると、ぶ厚く盛り上がった絵の具が、画面の上で波打つように見えます。その激しい筆の跡と、赤、黄、黒、白という単純な色の、強いコントラストに、少しびっくりするかもしれません。少し後ろに下がって全体を眺めてみましょう。そこには、横向きになった人間のかたちのようなものが見えてくるはずです。作者はオランダ人の画家、カレル・アペルです。第二次世界大戦が終わって、ようやく平和への希望が見え始めた1948年のパリで、アペルは何人かの仲間とともに「コブラ」というグループを設立します。「コブラ」と言う名前は、そこに参加した人々の出身地の地名(デンマークのコぺンハーゲン、ベルギーのブリュッセル、オランダのアムステルダム)の頭文字をつなぎ合わせて作られました。「コブラ」は、明確には説明できない衝動や欲望を、知性によって整理することなく、直接に表現しようとします。例えば、激しい身振りを画面にぶつけるような制作が行われました。「コブラ」の作家たちの作品にみられる動きのある表現には、このような身体を介した行為が反映しているのです。
彼らは、描かれた対象を構成する物質や、画面に塗り込められた絵の具のたい積そのものが自発的に発しているメッセージを敏感に感じとります。それらを自らの無意識のうちに感じている抑圧や忘れられない記憶と結び付けて、生き生きとしたイメージを誕生させようとしました。人工的に作り上げられた、洗練したかたちが与えるイメージより、私たちの心の奥底に秘められている根源的なイメージを出現させたかったのです。
この「コブラ」の運動は、わずか3年で終わってしまいます。しかし、豊富な色彩と激しい筆触によって描かれた力強い表現は、1980年代に起こった貝象的で表現的な絵画を描く傾向に対して、重要な影響を与えています。「コブラ」は、私たち人間の源流をさかのぼり、刺激を与え続けているのです。この作品に描かれているのは、裸の女の人です。オランダ語の作品名は「夜の女」。原色の絵の具のしたたりや盛り上がりの中から現れてくる裸婦の姿です。夜の歓楽街に生きる女性がもつ、あやしげでなまめかしい魅力から、アペルはどのような衝動を感じたのでしょうか。この作品は、10月17日まで開催中の「所蔵作品展93-II」のうちの「20世紀の人間像2」のコーナーに展示されています。
徳島新聞 美術へのいざない 県立近代美術館所蔵作品〈12〉
1993年9月25日
徳島県立近代美術館 友井伸一
1993年9月25日
徳島県立近代美術館 友井伸一