徳島県立近代美術館
学芸員の作品解説
スチール・ヘッド
1986年

265.5×315.0×29.2
ジョナサン・ボロフスキー (1942-)
生地:アメリカ
データベースから
ボロフスキースチール・ヘッド
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所蔵作品選1995

ジョナサン・ボロフスキー 「スチール・ヘッド」

安達一樹

 ジョナサン・ボロフスキーは、1942年、アメリカのボストンに生まれました。8歳のころから本格的に絵を習い始め、カーネギー・メロン大学、エール大学で美術を学びます。80年代初めから世界的に注目を集め、84年から85年にかけてアメリカの代表的な5つの美術館を巡回する大規模な個展が開催され、評価が決定づけられました。
 日本でも、87年に東京都美術館と滋賀県立近代美術館で展覧会が開催され、95年11月には名古屋市美術館で講演を行っています。
 ボロフスキーの作品は、カウンティング(数を数えること)と〈ハンマリングマン(槌打つ人)〉のような作家をとりまく現代社会の状況(外側の世界)によるもの、そして、この〈スチールヘッド〉のように作家の「夢」(内面の世界)からくるものがあります。とはいいながら、これらの源泉は互いに交流したり混ざったりしています。また、その表現方法も、立体、平面、ウォールドローイング、ヴィデオ、ゲームなどと非常に多彩で見る者を戸惑わせます。
 しかし、「すべてはひとつ」、そして「すべての(私の)エキシビション、展示作品はすべて、私の姿ではないように見えるものでも私自身なのです」と、ボロフスキーはいいます。作品が展示された空間は、劇場のステージとなり、鑑賞者も役者としてボロフスキーの時間を体験することになります。美術館の壁に浮かび上がったスチールヘッドは、ボロフスキーワールドの出現なのです。
毎日新聞 (四国のびじゅつ館) 学芸員が選ぶ26 
1996年1月13日
徳島県立近代美術館 安達一樹