徳島県立近代美術館
学芸員の作品解説
版画集〈11人のポップ・アーチストIII〉6. ジャクリーン・ケネディIII
1965年
シルクスクリーン 紙
101.5×76.2
アンディ・ウォーホル (1928-87)
生地:アメリカ
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ウォーホル版画集〈11人のポップ・アーチストIII〉6. ジャクリーン・ケネディIII ポップ・アート
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アンディ・ウォーホル 「版画集〈11人のポップ・アーチストIII〉6. ジャクリーン・ケネディIII」

竹内利夫

 1949年カーネギー工科大学を卒業した後、ニューヨークに移り商業デザイナーとして仕事をする。1960年代初頭より、続き漫画の主人公や映画俳優、スープ缶といった大衆的なイメージを用いた、シルクスクリーンの作品を発表し、一躍ポップアートのスターとなる。彼は、マリリン・モンローやキャンベルスープの缶など、大衆社会に無数にばらまかれているイメージを、改めて延々と繰り返してみせる。「機械になりたい」という彼の言葉通り、そこに、作家の感情や手仕事の痕跡は一切見出せない。それによって彼は、膨大な量のイメージを消費する大衆社会の状況そのものを描いてみせるのである。
 この作品で彼が選んでいるのはジャッキー(ジャクリーン・ケネディ)である。いくつかの報道写真の類から選ばれた大統領夫人の写真が淡々と配置されている。ジャッキーと名付けた連作を彼は既に発表しており、ここでも同じ写真が使われた。あたかも偶像として著名人の写真がマス・メディアの内部で自己増殖していくのと同じ仕組みを、ウォーホルは自分の制作体制の中で実践してみせている。
 彼の表現が、シルクスクリーンによって写真をキャンバスに移す方法によって急速に展開したことを考えれば、彼の版画がシルクスクリーンで作られることに疑問をはさむ余地もない。
特別展「コレクションでみる 20世紀の版画」図録 第1部 戦後の展開 2. 版画への衝撃
1997年4月12日
徳島県立近代美術館 竹内利夫