作家名:ウジェーヌ・デイジー
制作年:19世紀彫版
技 法:
エッチング
1738年のパリ美術博覧会で、
シャルダンは《六角独楽が回るのに見とれている宝石商のゴドゥフルワ氏の息子の肖像画》を出品した。その絵が《独楽をまわす少年》という題で1742年に彫版され、この名称のもとに有名になった。この作品は、ルーヴル美術館が油彩画を入手した時、銅版彫刻室によって注文されたものである。六角独楽というのは子供の遊びで、真ん中の軸を中心に回転する。木、骨、象牙等でできている円盤状の台で、遊ぶものである。表面あるいは円盤状の台の片面に字、あるいは、数字が彫ってある。“T”の字を出した者、あるいは何回か出した数字の合計が一番大きい者がこの遊びの勝者である。この六角独楽を回すため、この若い
モデルは、本来なら専心すべき勉強の象徴であるペン、インク壺、紙、本を脇に片づけてしまっている。少年の示した集中性は、同時代の人々を驚かした。
モデルは、銀行家で、宝石商であるゴドゥフルワ氏の息子アウグスト・ガブリエル・ゴドゥフルワ(1728−1813)であった。彼は後に、海軍の馬術教室および検査官長になった。(「近世フランスの絵画と版画−東京富士美術館コレクションによる」図録 2002年)