「びじゅつかん探険隊」の試み
 

ボランティアの導入
当館では、県民や利用者の方に支えられ、親しまれる美術館を目指して、平成15年度からボランティアを導入しました。作品解説や資料整理、館内案内など、具体的な活動内容は様々に考えられますが、それらを美術館があらかじめ用意するのではなく、ボランティア自身が内容を決定する自主的で継続的な運営を、将来的には目指しています。
しかし、一朝一夕には難しいので、まずは協力して一つの催しを実施することにしました。催しの大きな枠組みを美術館が決め、具体的な内容はボランティアが主体的に決定する、ボランティア参加型の事業です。


ボランティアの募集

そして平成15年4月、「夏休みに親子で美術館に親しむ催し」企画・運営ボランティアを募集。気軽な参加を目指して活動期間は4月から7月に限定し、資格などは特に問いません。短い募集期間でしたが、20歳代の学生を中心に60歳代の熟年の方まで16名の応募がありました。後に2名が辞退し、男女比は約1対2で女性がやや優勢です。

活動開始
活動はメンバー同士が知り合うことから始め、ボランティア初心者が多いので「ボランティアの心得」の研修を経て(とくしま県民プラザ林淳年さん)、企画アイデアの話し合いへと続きます。内容が白紙のため、意見の衝突もありましたが、展示室や屋外の作品にチェックポイントを設けるウォークラリーに決定。また「ものつくり」の体験コーナーも加えます。タイトルは「びじゅつかん探険隊」。
その後はグループに分かれて、チェックポイントの場所や課題の決定、チラシ、参加証、看板、各種パネルの作成等々の準備作業です。共通の活動日は10回ですが、個々のメンバーが都合に合わせて来館し、実質的には倍近くの回数となりました。苦楽を共にし、メンバー同士の結束も高まります。

びじゅつかん探険隊

夏真っ盛りの7月27日、快晴。いよいよ当日です。朝、チェックポイントを設置し、チラシを持って公園内で呼び込みです。セミやテントウ虫の格好をしてチラシを配ったメンバーは、やんちゃ坊主からキックの洗礼を受けます。
12時30分にそれぞれが持ち場について受付開始。親子連れが押し寄せました。靉嘔の彫刻<レインボー・ヴィーナス>を寝転んで見て、ロビーでパネルに好きな色を塗ります。色セロファンのメガネでピカソやクレーの絵を見たり、ムーアの彫刻では周囲をぐるぐると観察です。また3階のアトリエでは、参加証を加工してオリジナルカード作り。屋外展示場のボテロの彫刻<アダムとイブ>付近では、終日「ボテロー!」という叫びがこだましました。作品の前で声を出すのもチェックポイントの課題なのです。そして38組108人の参加者を数え、「びじゅつかん探険隊」は無事終了。


今後へ
8月に活動記録を2階ロビーに展示した後、探険隊メンバーはいったん解散しました。反省材料はたくさんありますが、準備の過程で得たものを大切に、これからもゆっくりと進んで行きます。春休みには、新メンバーを加えて二回目のボランティア参加型事業を実施する予定です。ご期待ください。

(主任学芸員 友井伸一)

イベント前日の最終打ち合わせ
セミとテントウムシのチラシ配り
高松次郎<影の自画像>のとなりで、絵の人物と同じポーズをとってみる。
ロビーで好きな色を塗る親子
オリジナル探険ブックをつくるモノつくり